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この国は「ハロウィン」で滅ぶ!

ハロウィン・ブームにモノ申す(著述家・古谷経衡)

 ゾンビ・コスプレも「ごっこ遊び」

 ハロウィンのコスプレ趣向にも慊(あきた)らないものを感じる。去年のこの時期など、なぜか知らぬがゾンビの格好をした男女が渋谷や六本木や新宿を闊歩していた。顔や服に血糊然とした塗料を塗りたくり、外傷のメイクなんぞをしているが、彼ら彼女はゾンビの父・ジョージ・A・ロメロの作品を見たことがないにちがいない。血糊がついただけの、なんとも軽佻浮薄なメイクをしてそぞろ歩くのは、到底ゾンビとは呼べぬ。
 ゾンビ映画に人一番愛着がある筆者としては、『Dawn of the Dead』あたりを忠実に再現するのならともなく、適当なイメージだけでゾンビとやらの仮装をやられたのでは、それは仮想などではなく単なるアマチュアの「ごっこ遊び」であり、ロメロ先生に対しても失礼にあたるというものだ。こんな軽佻浮薄なことを躊躇なく行うその思考の垂直性、動物性にも嫌悪を感じるのである。
 要するに思慮や想像力がないのである。特に、自分たちの躁的な狂騒の陰で、多くの人々が悔しさで血の涙を流しているのではないか、自分たちだけこんなに楽しんでよいのか、という疑問を持たない、その想像力のなさにも辟易とするのである。

「亡国」の責任は、若者か? 大人か?

 と、ここまでハロウィンを呪詛しまくってきた筆者だが、本当のところは羨ましいの一言に尽きる。なんてたって、うら若き男女が躁的で刹那的な青春を楽しむのは普通であり、当たり前のことだ。しかし、青春時代、若者だったにもかかわらず、その「当たり前」の躁的で刹那的な青春を全く送ることができなかった筆者のような「影」の住民は、毎年この時期になると、厳然たる己のみじめさ、卑小さを鏡で見せつけられているような思いに、愕然と膝から崩れ落ちるのである。

 排外、排斥を無言のうちに内包するハロウィンの一連の狂騒は、亡国への一里塚にちがいない。現世を躁的に、楽しく、刹那的に生きることに何の疑問を持たない人間が増えると、社会から改革や是正の機運がなくなってしまう。現世が楽しいからこそ躁的な狂騒に興じることができるのであり、社会に不満を持つ批判的精神を持っているならば、そんな躁的な狂騒にはまず第一に「否」と言わなければならない。
 しかし、こんな風に、齢三十を過ぎて、「リア充」を名指ししていまだ悔しい、悔しいと血の涙を流し続ける私のような厄介で偏屈で、頑固な教条主義者ほど、よほど亡国に加担していると指摘されれば、ぐうの音も出ない体たらくなのである。嗚呼、己の惨めさに落涙するだけである。

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古谷 経衡

ふるや つねひら

評論家、著述家。1982年北海道札幌市生まれ。立命館大学文学部史学科卒。インターネットと「保守」、メディア問題、アニメ評論など多岐にわたって評論、執筆活動を行っている。主な著作に、『知られざる台湾の「反韓」』(PHP研究所)、『もう、無韓心でいい』(ワック)、『反日メディアの正体』『欲望のすすめ』(小社)など。

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